GLBC リーダーシップ編 [国際基督教大学高等学校] (2018.8)
2018年8月27日〜29日、国際基督教大学高等学校においてGLBC リーダーシップ編を実施しました。

2018年8月27日〜29日、国際基督教大学高等学校(以下、ICU高校)においてGLBC リーダーシップ編を実施しました。

精神的にも体力的にも参加者をとことん追い込む2泊3日。17名の高校2年生、それに加えて同校の新人教員3名が受講者として参加しました。

今回、とあるひとつの仮想プロジェクトが設定されましたが彼女たちには合宿の間、本物のプロジェクトと思い込んでもらわなくてはなりません。限りなくリアリティを持たせた内容にしたためこの狙いは成功したようです。

彼女たちは3日間、プロジェクトにだけ向き合っていればいいわけではありません。初めて耳にするリーダーシップに関する多くのトピックを吸収し、ひたすら繰り返されるグループワークも並行してこなしていかなければならない。この研修は普段、社会人向けのリーダーシップ研修として行っている内容と同等のものです。大人よりも理解力や知識吸収力に優れた高校生年代の彼女たちにだからこそ、あえてレベルを落とさずに実施しています。それが将来を担う優秀な彼女たちに対して私たちが示すべき態度だと考えているからです。

GLBC リーダーシップ編は与えられたプロジェクトの遂行において、チーム内やチーム間で大小様々なコンフリクト(衝突)が起こるよう設計されています。自分の都合だけでは何も進められずお互いの話し合いや協議が必ず求められる。そういう場合に周囲とどうコミュニケーションするのか。プロジェクトの運営に人のマネジメントは欠かせません。

DAY 1

GLBCのGはグローバルの頭文字です。ではグローバルの定義とは何か。辞書を引いて出てくるのは数ある答えのひとつにすぎず、大切なのは自分自身の言葉で定義し、人に説明できるようにすること。かつチーム全員がその定義を共有できるようにすること。グローバルはこの合宿中ずっと問われ続ける軸となる言葉です。全員の共通理解が大切になってきます。

続いてGLBCのL、リーダーシップ。受講生には合宿前にあらかじめ、とある質問事項への回答を提出しておいてもらいました。それを元に特性分析を実施して結果シートが配られます。リーダーシップは特定のスキルを指すのではなく実はいくつかの特性に分類できる。では自分はどの特性に偏りがあるのか、どんなリーダー像に近いのか。誰もがリーダーになれる素質を持っている。さらにチームメンバーの特性を合わせたらチームとしても特徴を持つようになる。それを知ってもらいます。

さてGLBCでは通例として初日と2日目に特別講師によるセッションが行われます。

テラスの目的のひとつに「世の中のスペシャルな大人と、子供のマッチング」があります。何がスペシャルなのかというと“生き様”。有名だとか地位が高いとか稼いでいるとか偉いとかは関係ありません。簡単にいうとこの人と接してみて「早く大人になりてぇ!」と感じられるかどうか。私たちが登壇をお願いする判断基準はこの点のみ。だからジャンルは実に多岐に渡ります。講演等の登壇経験も問いません。なぜなら誰しもが次世代に伝えたい何かを必ず胸に秘めているだろうから。テラスが初登壇になればいい。

話がそれましたが今回も2名の特別講師がお越しくださいました。

初日夜は歌うコンサルタント・丹羽 大規さん。東京藝術大学声楽科を卒業後、音楽に道に進まず一橋大学でMBAを修了することを選んだ異才の持ち主。「音楽家が食べていける社会を作る」ことをテーマに活動されています。詳しい授業の模様は以下をご覧ください。
一生分 声について考えるワークショップ

丹羽さんの授業が終わった22:30すぎ。今朝早くに会場入りし、すでに身も心もクタクタな彼女たちに非情な宣告がなされます。彼女たちが1日かけて組み上げてきたプロジェクトの実行プランをぶっ壊す死のチェンジリクエスト。

絶望を抱えて各部屋に帰っていく生徒たち。こちらを刺すように睨む視線が痛い。気持ちいい。

DAY 2

昨夜のチェンジリクエストの影響か、6:30には会場で作業を始める生徒がちらほら。今日も1日長いのにゆっくり身体を休めなくて大丈夫なんでしょうか。まあ、そうさせてないのは私たちなんですが(笑)

2日目朝は2人目の特別講師、自転車旅人・西川 昌徳さん。大学卒業後、12年間で36カ国・90,000kmを自転車で走破し、この日も日本一周(2周目)の最中に北海道・稚内からわざわざ飛行機で駆けつけてのご登壇でした。詳しい授業の模様は以下をご覧ください。
君たちはどう生きるか

特別講師の夢のような時間が終わり、これからは現実と向き合う時間が最後まで続きます。昨夜のチェンジリクエスト以来ようやくまとまった時間を得て作業に取り掛かれました。夕食を済ませた後は一旦部屋に戻り入浴してリフレッシュした生徒も。

そして作業再開の20:00、会場に集まった生徒たちに例の宣告が下されます。2度目。勘弁してよといった様子の生徒たちですが、すぐに気持ちを切り替え受け入れ始めています。1日でかなりタフネスが身に付いたようです(笑)

そして21:00、中間レビュー。彼らのプランに唯一、講師陣が口を出す時間です。基本的に彼らの作業に対して質問に答えることはあっても方向性を決定し得るレベルのアドバイスはしません。逆に問い返すだけで質問に答えることすらほとんどありません。彼女たちは自分たちのプランが妥当なのか半信半疑のまま進めています。そこでこのレビューです。そのプランで本当に最終目標を満たせるのか、他にどんな選択肢を検討したのか、オーディエンスを納得させることができるのか。

そう、最終発表の場には彼女らのプレゼンを評価するオーディエンス(外部ゲスト)をお招きしています。仲間内で楽しくやれればいいと思ったら大間違い、実際は外部者の評価に容赦なく晒されます。彼女たちもそれをわかっているからこそ真剣に、私たちのレビューに耳を傾け、疑問に答えようとします。過去何度も目にしていますがこの時間を経て彼女たちの思考は大幅に飛躍します。驚くばかりです。

DAY 3 (Final Day)

この日も6時に会場が開き、6:30にはほぼ全員が会場入り。

ゲストがお越しになる14時までにプレゼンを仕上げてリハーサルも行わなくてはなりません。刻一刻とその時が迫ります。

遊んでるチームも、、、ではなくプレゼンの一部を担うムービー作成の様子です。

こっそりと別会場でゲストへのブリーフィング。

14時、最終発表。

5名のゲストを迎え、与えられた30分間をフルに使ってプレゼンを終えました。

その後の質疑応答ではゲストから発せられる容赦ない質問に対し、毅然とした態度で答える姿が印象に残りました。

こうして2泊3日のGLBCが終了した。

設定された背景の上で、想定される問題をいかに解決しつつ深い洞察を以って確度の高いアウトプットへ到達させるか。

最終発表は参加者21名の総意により作り上げられたものだが、そこに到るまでにお互いに相手に合わせ妥協もしただろうし、無理を通した場面もあっただろう。時間が足りなかったかもしれない。あの内容が自分にとって最も理想だと言える人は1人もいないはず。全員がモヤモヤし、不十分さを認識して臨んだだろう。

しかしGLBCはアウトプットの質を必ずしも求める合宿じゃない。2泊3日の限られた中で彼女らなりのセンスで情報収集し、周囲と意見を衝突させ、もどかしさを感じ、嫌われる勇気を発揮し、明らかに無理と思える状況であってもそこから必ず時間内にゴールさせる。そうやって苦しみを乗り越えた先にある感覚の獲得こそがGLBCの狙いだ。そもそも質を求めればChange Requestは組み込まない。

「いかに彼女らを揺さぶるか(追い込むか)」

アウトプットへのプロセスにおいてとことんテンパらせる。時には強く、時にはソフトに。そのさじ加減は現場で判断するため常に彼女らを観察し、必要なら講義内容やスケジュールも変更する。

ありがたいことに彼女らを追い込むことにICU高校の先生側が十分に理解してくれてる。というかグヒヒと楽しみながら一緒になって追い込んでる。これは生徒と先生の信頼関係がなければできない芸当で、我々はその前提の上で自由にさせてもらっているだけにすぎない。その関係性がなければパワハラで訴えられてもおかしくない(笑)

特別講師の存在は言ってみれば彼女らの将来に対する揺さぶりだ。「大切な場面でこんな風に決断しちゃう人がいるのか」という驚き、「周囲の期待や常識を取っ払えたら、本当の自分はどうしたいのか」といった葛藤、あるいは純粋な憧れかもしれない。イキイキと生きている人を目の前にして、自分の本音と向き合うきっかけになれば嬉しい。

GLBCで取り扱うテーマ(課題)自体も常にアップデートさせている。今回は毎日の作業期限を23時にしていたが24時まで居座られ、さらに翌5時から作業したいという。予定は9時だ。お願いだから寝てくれ(寝させてくれ)と6時にしてもらう。重いテーマになるにつれて、追い込みがキツくなるにつれて生徒のタフさのリミッターは外れていくようだ。

「もうお風呂入らないでその分寝るから大丈夫!」
全然大丈夫じゃないし、お願いだから風呂は入ってね(笑)