2017年3月25日、GLBCキャラバン・エナジー東京を開催しました。
GLBCキャラバンは、通常は学校向けに実施しているブートキャンププログラムGLBCを広く体験してもらいたい、違う学校の生徒同士が様々な問題に力を合わせてチャレンジする機会を作りたいとの思いから昨年スタートしたオープンイベントです。
前回は6校から、今回は16校から、短く貴重な春休みの1日に多くの生徒がご参加くださいました。
2017年3月25日、GLBCキャラバン・エナジー東京を開催しました。
GLBCキャラバンは、通常は学校向けに実施しているブートキャンププログラムGLBCを広く体験してもらいたい、違う学校の生徒同士が様々な問題に力を合わせてチャレンジする機会を作りたいとの思いから昨年スタートしたオープンイベントです。
前回は6校から、今回は16校から、短く貴重な春休みの1日に多くの生徒がご参加くださいました。
すでに学校向けGLBCを2回と前回のGLBCキャラバンを受講し、今回が4回目となる生徒がいる一方、遠く三重県から初参加の中学2年生もいました。本来は参加対象学年(中学3年生〜高校3年生)ではなかったもののどうしてもチャレンジしたい!との熱意に心動かされ、お申し込みを受け付けることに。これは結果的に最良の判断でした。
新年度の準備で非常にお忙しいにもかかわらず各学校の先生方もたくさんお見えになり、自校と他校の生徒が入り混じって奮闘する様子をご覧くださいました。
当日欠席者がありましたが43名、全9チームで過ごす1日がこうして始まりました。
午前の部(講師:中鉢)
DREAM SCHOOL 〜学校の当たり前を疑え!!〜
夢の学校を作ろう!という内容のワークショップ。学習テーマはサブタイトルにあるように「当たり前を疑う」ことを求める、いわゆるクリティカルシンキングです。
いま通っている学校に不満がある?
学校の当たり前を疑ってみたらどうだろう?
出るわ出るわ、学校の変なルールやおかしな伝統。学校に知れたらひっくり返ってしまいそうな過激なものも。というか学校の先生方も教室の後ろでたくさんご観覧なさっているのに勇気がありますね(笑)
でも不満を並べるのは誰だってできる。現状を否定するなら代替案を出すのが責任ある態度というもの。
理想の学校をデザインしようぜ!
講師から学校作りの骨子となる要素(MVP、入試方法、時間割)が提示され、各チームが一斉にDREAM SCHOOL作りに取りかかりました。
たっぷりあると思われた準備時間はあっという間に過ぎ、全チームによるプレゼンテーションが始まります。
毎日朝の2時限を部活にする!
受験生同士のディスカッションを入試に取り入れる!
様々な分野に精通する人材を輩出する!
世界で活躍できるパーフェクトな人間を育成する!
主要5科目を高校1年生までに完成させる!
英語は中学まで、高校からは第二外国語を選択できるように!
食後に15分間の昼寝を導入!
日本と中国の架け橋となる学校作り!
休み時間なし!(←大胆な提案…)
ディスカッションをメインとした1時限90分の授業!
入試で礼儀・マナー・作法を見る!
校外行事を積極的に取り入れる!
挙げきれないほどの提案が次々と。その中でも多くに共通していたのがコミュニケーション力と主体性(リーダーシップ)の重視です。
もしかして、彼らが日々の生活の中で大切なことと直感していながらも学校で十分に学べていないと感じているのかな?
学校もおそらく承知していることでしょう。しかしただでさえ忙しい学校スケジュールをこれ以上過密にするのは現実的でなく、どの学校もジレンマに悩んでいるのではないでしょうか。結果的に各生徒が個人的に学校外の活動へこれらの学びを求める状況になっている。
学校運営の難しさの一端を垣間見れた気がしました。特に私立校は揺るぎない理念や軸を持たなければ容易に外の変化に流されてしまう。もちろんそれを受け入れるべき場合もありますが変えてはいけないアイデンティティも学校ごとにあるはずで、そのバランスの中で日々の授業をする先生方の苦労は一言ではとても言い表せません。
各チームでも、ほんの4、5名であるのに意見を統一して学校を作る難しさをそれぞれ感じたのではないでしょうか。
チーム間でコンペティションする場合、普段の私たちのワークショップではご観覧者の方々に採点をお願いして順位を決めています。
しかしこのテーマは10代が考える夢の学校。
ならば同じ年代から支持を得られてこそのアイディアでしょ!ということで初の試み、ネット投票を取り入れてみました。
投票期限は午後のセッションが終わる午後5時まで!
自分たちのアイディアをSNSを駆使して拡散し、1票でも多く得たチームが優勝です。拡散だけでは不十分で票を得る必要があり、しかもランディングページには全チームの発表内容と投票ボタンが掲載されているため頑張って拡散しても他チームに票を入れられる可能性が。単なるバズ力(りょく)の優劣では決しないのが難しいところです。
良いアイディアでも支持を得られなければ所詮自己満足。
むしろ支持を得たアイディアこそが良いアイディアという少々乱暴なやり方ではありますが、ここは彼らのアピール力に期待して結果を待つことにしましょう!
午後の部(講師:JERAご有志の皆さま)
Global Energy High School ~日本のエネルギー危機を救え!!~
お昼休みを経て、いよいよ本日のメインセッションが始まりました。
世界的規模を誇る燃料調達カンパニーである株式会社JERAのご有志が、エネルギー問題を次世代と共有したい、彼らに自分事としてエネルギー問題を捉えて欲しいと、プライベートな時間を使い半年間かけて作り上げたエネルギーゲームを初お披露目します。(場所もご提供くださいました)
この日は土曜日。彼らは自らの休日を使い、持っている知識や経験を惜しみなく次世代へ注いでくれました。教員をされている奥様と一緒に、本イベントが彼女の参考になるかもしれないとご夫婦で参加されたスタッフもいたそうです。企業活動ではなくプロボノ活動だからこその、このオープンさ!私たちにとっても本イベントをこのように捉えてくださることに心から嬉しく思います。
まずはじめに日本のエネルギーを取り巻く現状の解説から。
6%
日本のエネルギー自給率を表す衝撃的な数字が紹介されました。つまりエネルギーのほとんど、94%は海外に依存している、と。その中でも液化天然ガス (LNG)は、日本の発電における燃料の約半数という大きなシェアを占めているそうです。彼らが普段行なっている業務はまさにこのLNGの調達だと言います。
LNGをいかに安価で調達できるか。それは国民が負担する電気料金に影響します。
実はLNGには確立された市場が存在せず、調達には様々なリスクが潜んでいます。
例えば将来の電力需要を予測し、需要に応じた長期のLNG購入契約を結べば価格を抑えられます。しかし、もしも電力需要が予測を下回り全量を引き取れない(備蓄できる量には敷地上の上限がある)場合でも全量に対し支払う義務(Take-or-pay)を負うためコストが増大してしまう。
将来の電力需要の正確な予測こそが効率良い調達の条件であることが分かります。
そこでこれから発生するであろう様々な要因を鑑み、10年後の日本の電力需要を予測するアクティビティに挑んでもらいました。
2020年の東京オリンピック、省エネ家電のさらなる台頭等。各チームが知恵を絞り、それぞれの需要グラフを弾き出します。
次は需要に応じたLNGの調達。
ここでキーになるのはどのような契約ポートフォリオを描くか。
契約は一種類ではなく、長期(価格は安いがTake-or-payのリスクを含む)、短期(価格は高いが需要に合わせやすい)、スポット(価格は最も高いが不足分だけを無駄なく調達できる)といった種類があります。またアメリカ、ヨーロッパ、中東等の地域の違いやDQT、UQTといったオプションの有無も存在します。このような性質の違う契約を組み合わせ、リスクをヘッジしつつ、かつ調達価格をできるだけ安くするポートフォリオ作りこそがLNG調達の核心と言えます。
受講生たちは今日初めて聞くであろう多くの用語にも柔軟に対応し、チームで話し合いながら、また各チームに配されたスタッフたちにアドバイスを求めながら、前のアクティビティで弾き出した需要グラフに合わせた自分たちのポートフォリオを練っていきました。
ところで今回のセッションでは各チームのテーブルにPCが設置され、アクティビティに必要なあらゆるデータを常に閲覧できるようになっています。それだけでなく数値のシミュレーション結果もリアルタイムで表示されます。受講生たちはディスカッションした内容を都度試し、やり直し、結果を協議できる。講師をつとめる彼らがこのエネルギーゲームのためだけに開発した渾身のシステムです。これには教材作りに精通したご観覧の先生方も「学校の授業で使いたいほど!」と大絶賛でした。
この時点で全チームの調達価格が出揃いました。
いくつかのチームにどのような考えでポートフォリオを組んだかを発表してもらいましたが、この数時間でキャッチアップしたとは思えないほどの理解力で、実に的確な結果を出していたことにとても驚かされました。私たちでさえ数ヶ月間、何度となく打ち合わせして内容を理解したというのに(笑)
さて調達価格は出揃いましたがこれでお終いにはなりません。次の入札を以って最終的な調達価格、つまり順位が決定します。最後まで気が抜けませんよ!
入札は、
多く調達したら希望価格で(他チームへ)売る
少なく調達したら希望価格で(他チームから)買う
といったことができるフェーズ。しかしこの他にもうひとつ、オプションの行使があります。
契約によっては購入量が多すぎたら減らす、逆に少なすぎたら増やすことができるオプションが附帯し、これを行使すると最終的な購入量を調節できる。つまりオプションの行使と入札を上手に行なうと調達価格を劇的に安くできる可能性が残されている…
全チームのポートフォリオが壁に張り出され、お互いの駆け引きが始まります。自分たちの調達価格は何番目なのか。場が売り手市場なのか買い手市場なのか。どこがどういった入札をするのかあちこち嗅ぎ回るチームも出てきたり(笑)、最終決戦に向けていよいよ場が賑わってきました。
スパイ行為はあえてルールに入れてなかったが実は非常に理にかなっていて、しかもリアル。彼らは物事を有利に進めようと頭を捻った結果、ルールの抜け穴を見つけて行動に起こした。これにはスタッフ全員が驚き、行方をワクワクしながら見守っていたそうです。
入札が終わり、いよいよ最終結果が発表されました。
優勝はチーム99%に!
他チームより1人少ないながらも全員が奮闘して勝利を掴みとりました。心からおめでとうを言います!
この日同じくプロボノでご参席されていたJERA・ゴーデンカー会長から受講生全員に修了証が手渡され、初めて行われたGlobal Energy High Schoolはここに幕を下ろしました。
ところで今日のはあくまでゲームですが限りなくリアルに近いゲームです。というのもJERAのご有志が普段行なっている業務をテイストそのままでゲームに落とし込んでいるから。プレーヤーはゲームの中でリアルビジネスをロールプレイしているわけです。設定もリアル、行為もリアル、結果もリアル。楽しくないはずがない。
Global Energy High Schoolの鍵はここにありました。エネルギー問題を身近に感じて欲しいけれど、言葉だけで本当に伝わるのだろうか。自分事にしてもらうには体験するのが最良の方法である。ではどういう体験にすれば?
その答えがとことんリアルを追求したゲームでした。国内の電力需要に応える燃料調達の難しさ、電力需要を支える責任の大きさをリアルな体験を通じて自然と知ることができる。
しかし端から見ればこんなに複雑なルールを理解してプレイするのは限られたプレーヤーだけなのでは?と思いがちですが実際にそうでした。しかしグループワークが良いのは初めこそ理解するプレーヤーがワンマンで進めるがそのうちに周囲も理解し、次第にゲームに参加していけるところ。
最終的には全員が満足して終われる…
実によくできています。
そしてここにいる皆さんはおそらく次の日から、LNG調達について一丁前に語れるようになっているはず(笑)それくらい記憶に突き刺さるゲームだったと思います。
DREAM SCHOOL、開票!!
GLBCキャラバン・エナジー東京はこれで終わりではありません。
覚えていますか?
午前行なったDREAM SCHOOL、その投票結果をまだ伝えていないことを!
そして私の手元には得票ランキングが。
いよいよ発表です。
優勝、チームふらぺちぃーの!
彼らは5人全員が抜群のチームワークを発揮し、とてもいい雰囲気で一日を過ごしていたのが印象的でした。そして冒頭でお伝えした中学2年生はこのチームのメンバー。上級生ばかりの中でしっかりチームにコミットできていたように見えました。本当におめでとう!
最後に
受講生にとっては何をやるかも分からない(?)このイベントに自らの意志で参加し、慣れない環境で朝から夜まで頭をフル回転させて過ごすことは決して楽しいだけではなかったはずですが、次第にたくさんの会話が生まれ、笑顔が生まれ、目標を成し遂げようとお互いを切磋琢磨する姿は、周りにいたオトナたちを軽く嫉妬させました(笑)
そしてJERAご有志におかれましてはエネルギー問題という難しいテーマを中高生の理解範囲ギリギリにまで落とし込み、ゲームとしてまとめ上げることに前日まで腐心したそうです。簡単すぎても難しすぎても、どちらに振れても受講生の満足は得られない。だから絶妙なポイントを探さなくてはいけない、と。
本物の人々が作るコンテンツのパワーは圧倒的です。そして、そのパワーを最後まで受け止め切った受講生たちの秘めたる可能性の大きさ。GLBCキャラバン・エナジー東京を通じて、改めて思い知らされました。
春休みの貴重な一日、GLBCキャラバン・エナジー東京にご来場くださいました全ての皆さまに心から感謝を申し上げます。