もう騙されない!思い込みの統計問題にガチで向き合う100分間 [聖学院中学校・高等学校] (2017.6)
2017年6月10日、聖学院中学校・高等学校において数学の特別授業“もう騙されない!思い込みの統計問題にガチで向き合う100分間”を実施しました。

聖学院中学校・高等学校の希望者を対象に開かれる数学思考力lab。

“数学スキルの再定義”を旗印に同校の先生が推進・実施するプロジェクトで、伝統的な数学とは別に「生きた数学」を身に付けることを目指しています。

テラスはこれまでプログラミング分野の授業プログラムを提供してきましたが、今回「統計」授業のオファーをお引き受けすることに。

しかし表やグラフの読み書きや統計情報から何を思考し、結論へと繋げるかといった基礎的な統計スキルの事前学習は済んでいる状態、と。

その上で学ぶべき統計トピックはどんなものであるべきかを検討しました。
かつ、テラスらしいエッジが効いた内容にしたい。

迷った時は基本に立ち返りましょう。

「なぜ『統計』が存在するのか」

ところで統計とは散らばったデータを共通項でまとめ、分かりやすく可視化して結論を伝えるためにあります。

ではなぜこういうことをする必要があるのでしょうか。

理由は色々ありますが、究極的な目的は

相手を納得させるため

である、と定義できます。

統計は混沌の中から根拠を見出して論説するツールである、と言えばポジティブに聞こえるでしょう。

しかし前提となる根拠の示し方によっては誤った結論を伝えてしまう恐れがあります。

誤解を恐れずに言えば正しいかどうか不明な事柄を(論理的に見える根拠を示して)正しいと思い込ませる武器になり得るのです。

他人に伝える、ではなく“他人に承知させる”ために統計を使う。
結論ありきの自らの主張を通すために統計を使う。

もちろん悪用を推奨するつもりはなく、意図せず結果的にそうなってしまうことだってあります。

しかし自分に悪用するつもりがなくても相手がそのつもりで情報を伝えてくる、あたかも正しい情報かのようにそれらしく見える根拠と共にあなたの目に触れさせてくる可能性は十分にあり得るのです。

そうだ、玉石混淆の情報社会において防衛手段としての統計スキルを身に付ける大切さを伝えよう。

テーマは少しセンセーショナルに「騙されない統計」としました。

思い込みと結果が異なりがちな数学的・統計トピックのいくつかを題材に思い込みがいかに思い込みであるかを自らの手で検証し、情報を鵜呑みにする危険性を体験してもらう内容です。

せっかくコンピュータールームを使用するならPCで大量のサンプルを自動生成して統計のデータに活用したり、数学の授業であることから特殊な条件を一般化して思考する要素を入れたり、学校側のご要望も取り入れた構成にしました。

これまで受けてきたものと全く異なる趣旨の統計授業であろうから、生徒たちが受け入れてくれるか少し心配していました。

しかし彼らはこの授業の意味を、単なる学校の学びではなく社会で真に役立つ学びであることをちゃんと理解してくれたようです。

知識の向こう側にある統計の奥深さを感じ、もっと興味を持ち統計に触れる生徒が一人でも現れてくれればこれ以上の喜びはありません。