FUTURE WORK [山口県立宇部高等学校] (2016.5)
2016年5月30日〜31日、山口県立宇部高等学校においてFUTURE WORKを実施しました。

5月30日・31日、山口県立宇部高等学校におきまして高校1年生の全員を対象にテラスのプログラム〈FUTURE WORK〉(副題:未来の仕事を考えるワークショップ)を実施しました。

242名という大人数に向けて一斉にアクティブ・ラーニングを行うことはこれまで例がなく、私たちにとって初の試みであったため十分な確認を重ねてまいりました。

しかしあらゆる不測の事態に備えてさらに上回る準備を学校側でなさっていると伝え聞き、何としてもこの授業を成功させるんだという学校や先生がたの強い意思を受け取り、私たちもますます身が引き締まる思いでこの日を迎えました。

同校は文部科学省から山口県で唯一のSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)の指定を受け、同時にSSH(スーパー・サイエンス・スクール)指定校でもある、公立校の中でも特に進んだ取り組みを行っていらっしゃいます。

SGH活動の取り組みの例としてフェアトレードクッキーのプロジェクトがあります。スリランカから適正価格で材料を買い、コンテストでグランプリも受賞する地元で有名なパティスリーにレシピ考案の協力を仰ぎ、地元の福祉施設に製造を委託し、JALと共同で販売。さらに売上の一部を寄付に回す。これらの全てを同校の生徒が一から企画・開発・プロデュースしているというものです。

同校では〈アウトリーチ〉をキーワードに、生徒が学校の外へアクションできるよう体制を作り積極的に勧めています。それが実を結び昨年から継続した取り組みになっているとのことで、今夏には東京都内のイベントへも生徒を連れて出店するそうです。

今回私たちも同校のSGH活動の一環としてお迎えいただきました。働き方に国境がなくなり始めている昨今、今後ますます世界を意識した活動を余儀なくされます。そのような時代に生き生きと生きるにはどういった考えでいるべきか

FUTURE WORKは働き方や仕事について新たな視点を持ってもらおうという主旨のキャリアデザイン・ワークショップです。

4月の新入生たちにとっては最初の考査を終え、その結果に一喜一憂した直後のこの時期に学力以外の評価軸で自分の可能性を見つめる機会にしてもらいたいとの狙いもあるようです。

初日、会場である大きな体育館へ集合した生徒たちはこれから何が始まるのかと緊張と疑念(笑)の表情で講師・中鉢の話を聞いていましたが、いくつかのグループワークを済ますにつれて糸がほぐれ終始和やかな時間が流れていました。

翌日は各チームが練って作り上げたプランを発表してもらうため、その資料作りが始まります。

6クラス48チーム。これだけのチームがあればそれぞれの中に様々な個性が見えてきます。

抜群のチームワークで明日に向けて一気に準備を進めるチーム。
お互いにアイディアが出すぎてまとめきれないでいるチーム。
意見が紛糾して一触即発のディスり合いに発展しそうなチーム。
議論を放棄し、会話もペンも止まったままお通夜状態のチーム。
細部まで念入りに資料を完璧に仕上げようとするチーム。
資料は最低限にし本番のパフォーマンスに全てを賭けるチーム。
アイディアは秀逸だけどビジネス化のプロセスに苦しむチーム。
ダジャレ一発、アイディアはいかにも後付けというチーム。
プランを練りすぎて手に負えなくなってしまっているチーム。

自分の好きなコト・モノをお互い出し合って新しい仕事を作ろうという呼びかけは一見すると公平に思えますが、実際に行ってみるとそれは〈自分には全く興味がない(時には嫌悪すら催す)要素も受け入れなければならない〉可能性があり、それには大変な苦痛を伴います。人は苦痛を感じると、拒否します。

一旦このポケットに陥ってしまうと何を言ってもお互いに否定し合い、もはや意見を述べたりアイディアを出すことはなくなってしまいます。

明日発表することはもう決まっています。嫌が応にも発表の準備を終えなければならない。そのためにいかに異なる意見を受け入れ、妥協点を見つけ、チームのプロセスを先へと進めるか。結果的にそれがより良いプランであれば個人の好き嫌いに勝るのだということを理解しなければなりません。グローバルに生きるとはつまりそういうものだからです。

しかし一切のトラブルもなく事が進むのは稀です。そのようなチームに私たちはできるだけ声掛けをして前に進めるよう背中を押しますが、最終的に彼ら自身の力で解決するよう求めます。ぶつかり合い、痛みを感じたことから多くを学ぶことを大切にしてもらいたいと願っています。

242名48チームがひとつの教室に会し、ひたすらゴールに向かおうとするエネルギーの集合に最後には気圧されそうになりました。

2日目、発表の日。ルールはまずは各クラスの8チームで予選を行い代表(1位)チームを決めます。次に各代表チームで決勝を行い優勝を決定します。

優勝すれば100億円相当の賞品を手に入れられますが、実はチームではなくクラスに与えられます。つまり決勝はクラス対抗戦。予選で涙を飲んだチームは一転、ライバルだった代表チームを今度は全力でバックアップする役目に回ります。

想定される質疑応答を共に考えシミュレーションしたり、本番での盛り上げ役を買ったり。

結果はイノベーティブなシャープペンのプランを提示した女子5名のチームが優勝しました。

ただし他の47チームのプランが劣っていたわけでは決してなく、たまたま評価者(採点者)の好みにあった、評価が高かったということなのかもしれません。

今回は同校の校長先生、教頭先生やお招きした県教育委員会の方がたが採点を務めました。もしかして評価者が変われば別の優勝チームが誕生していた可能性もあります。

とはいえビジネスの成功は運とタイミングに大きく左右され、運を呼び込む能力もまたビジネスセンスの大きな要素と言われます。運も味方につけ頂点を掴んだ女子5名には間違いなく備わっていたことでしょう。

今回、限られた時間の中でワークショップを行うにあたり先生方の見事なタイムキーピングに大いに助けられました。そしてなにより同校の生徒たちのポテンシャルの高さに驚かされました。

滞りなく成功のうちに終えられたことを嬉しく思うと同時に、学校の厚いサポートの中お迎えいただけたことに心より感謝を申し上げます。

また宇部高校の生徒たちにお会いできる日を楽しみにしています!皆さんの明るい将来を願っています!